証券会社のパスワード、覚えているわけがない
AIの「アイ」によるスパルタ指導が始まった。
「デモトレードをする前に、まずは武器(口座)の点検です」と言われ、私は記憶の底を探る。

口座ならあるぞ! 20年前に作った『〇〇証券』の口座がな。
確か、電話で注文するとオペレーターのお姉さんが優しく対応してくれるんだ。

(電話…お姉さん…昭和ですか?) Jさん、その口座の手数料を確認しましたか?

ん? 確か1回の注文で2,500円くらいだったかな。 往復で5,000円。
利益が出たらそこから引かれるんだ。株なんてそんなもんだろ?

……。
アイがまた、あの「ゴミを見るような目」をしている。
現代は「手数料ゼロ」が当たり前?

Jさん、驚かないでくださいね。
今のネット証券は、売買手数料『0円』がスタンダードです。

はぁ!? 0円!? 証券会社はどうやって儲けるんだよ!
霞(かすみ)でも食ってるのか?

信用取引の金利や、ポイント経済圏で収益を上げているんです。
2,500円も払って取引するのは、今の時代、
『ATMで毎回手数料払ってお金を引き出す』より無駄な行為ですよ。

ぐぬぬ…(例えが分かりやすくて腹立つ…)。
じゃあ、そのオペレーターのお姉さんともお別れか…。

そもそも20年間一度も電話してないですよね?
感傷に浸る暇があったら、スマホを出してください。
今すぐ『SBI証券』か『楽天証券』を開設します。
スマホだけで完結? ハンコはいらないの?
私は渋々、アイに言われるがままスマホを操作する。
昔は資料請求をして、分厚い封筒が届いて、住所を書いて、銀行印を押して、ポストに投函して…と、口座開設だけで2週間はかかった記憶がある。

おーいアイちゃん。印鑑どこやったっけな。
朱肉が乾いてるかも…

ハンコ? いりません。
マイナンバーカードをスマホのカメラにかざしてください。
『eKYC(電子本人確認)』で終わります。

e…えーけー…なんて?

いいから、顔をスマホに向けて! 少し笑って! はい、認証完了。
これでもう申し込み終了です。早ければ明日から取引できますよ。

嘘だろ!? 5分も経ってないぞ…。
20年の進化、恐るべし…。
第1回講義:NISA(ニーサ)って美味しいの?
手続きを終えた私に、アイが畳み掛ける。

当然、口座の種類は『新NISA(ニーサ)』を選びましたよね?

ニーサ? ああ、ニュースで聞いたことある。
なんか税金が得するとかいうやつ?
面倒だから『一般口座』にしといたけど。

…Jさん、正座してください。

えっ、なんで?

株で儲けた利益には、通常約20%の税金がかかります。100万円儲けても20万円没収です。 でもNISAなら、それが『丸々非課税』になります。 これをやらないのは、『道に落ちている20万円を拾わずにスルーする』のと同じです。

に、20万円!? 拾います! すぐ拾います!!
こうして私は、なけなしのプライド(古い知識)をまた一つ捨て、現代の投資環境に足を踏み入れた。 武器(口座)は揃った。手数料も無料だ。
あとは「何を買うか」だけ。
次回、いよいよ私の「古すぎる相場観」がAIのデータ分析によって丸裸にされる。
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