「安い」にはワケがある
前回の補習で私は「PER(元を取る年数)」と「PBR(解散価値)」の意味を叩き込まれた。
その知識を武器に、再び銘柄探しを始めたのだが…。

おいアイちゃん! 見ろよこの株! PBRが0.3倍だぞ!
会社の金庫にある現金の『3割引』で株が売られてる!
これこそ最強の割安株だろ!

(ため息)Jさん、前回言いましたよね。
『なぜそんなに安いのか(不人気なのか)』を考えろと。

えっ? 理由?
うーん、知名度がないから…とか?

違います。
その会社が『投資家から預かったお金を増やす能力(稼ぐ効率)』が絶望的に低いからです。
お金をドブに捨てているような経営者に、誰が好き好んで投資しますか?
「3限目:ROE(自己資本利益率)=「経営者の通信簿」
アイは再び、ホワイトボード(のホログラム)を展開した。

今日覚えてもらうのは、現代の株式市場で外国人投資家が一番見ている指標です。
それが『ROE(アール・オー・イー)』。

アールオー…? 必殺技か何かか?

Return On Equity(自己資本利益率)の略です。
計算式は『純利益 ÷ 自己資本(株主が出したお金)』。
つまり、株主のお金をどれだけ効率よく増やしたかを表すパーセンテージです。

うーん、パーセントと言われてもピンと来ないな…。

では、この図を見てください。一発で分かります。


Jさん、あなたが社長だとして、部下に100万円ずつ渡して商売をさせたとします。
部下Aは頑張って20万円の利益を出しました(ROE 20%)。
部下Bはダラダラして1万円しか稼げませんでした(ROE 1%)。
さて、ボーナスをあげて『もっと頑張れ』と追加資金を渡すなら、どっち?

そりゃあAだろ! Bに金を渡すなんて死に金だ。
むしろBはクビにしたい。

ですよね。 でもJさんがさっき選んだ『PBR 0.3倍の株』は
まさに部下B(ROEが低い会社)だったんですよ。

な、なんだってー!?
俺はダメ社員にお金を貢ごうとしていたのか…!

人気がない(株価が安い)のは当然です。
稼ぐ力がないんですから。
逆に多少株価が高くても(PERが高くても)、
みんなが部下Aにお金を預けたがる理由が分かりましたか?
「足切りライン」は8%

では、具体的にどのくらいの数字なら『稼ぐ力がある』と認められるのか。
一つの目安となる数字があります。『8%』です。

8%…? 消費税みたいな数字だな。
なんでまた8%なんだ?

『伊藤レポート』という経済産業省の報告書でも提言された基準なんですが、
要するに『最低でもこれくらい稼がないと、投資家に見向きもされませんよ』
という合格ラインです。

合格ラインか…。
じゃあ、さっき俺が選んだ『PBR 0.3倍』の激安株はどうなんだ?

その銘柄のROEは『2%』です。 つまり、投資家からは
『資金を有効活用できていない落第生』という烙印を押されているわけです。
だから株価が安くて当たり前なんです。
20年前の常識を捨てろ

俺はずっと『安いこと=正義』だと思ってた。
でも、安いのには『稼ぐ力がない』という致命的な理由があったんだな…。

20年前のデフレ時代は、資産を持っているだけの『PBR1倍割れ株』でも良かったかもしれません。 ですが今の相場は『高くても、成長する企業(高ROE)』にお金が集まる時代です。
古いモノサシ(PBR)だけで測っていると、一生『万年割安株』を掴まされ続けますよ?

危なかった…。
『割安』という言葉の甘い罠に引っかかるところだった。
良い会社は見つかる、だが…

よし、分かったぞ。
これからは『PERとPBRで割安性をチェック』しつつ『ROEで稼ぐ力をチェック』する。
この合わせ技を使えば最強の銘柄が見つかるはずだ!

その通り。
その3つの指標(ファンダメンタルズ)を組み合わせれば、
理論上は『割安で優秀な会社』が見つかります。
…ですが、Jさん。
『良い会社』が見つかったとして、いつ買いますか?

えっ? いつって…。 見つけたらすぐ買えばいいんじゃないのか?

それが一番の失敗パターンです。
いくら良い会社でも株価が暴騰しているてっぺんで買えば大損しますし、
逆に暴落の途中で買えば助かりません。

うっ…。確かに、昔それで高値掴みして痛い目を見た記憶が…。

『何を(What)』買うかと同じくらい『いつ(When)』買うかが重要なんです。
そのタイミングを計るためには企業の成績表ではなく、投資家たちの心理を読む必要があります。

心理を読む…? そんな超能力みたいなことができるのか?

超能力ではありません。
過去の投資家たちが残した足跡、つまり『チャート』を見ればいいのです。
PER、PBR、そしてROE。 企業を評価する「武器」は手に入れた。
しかし戦場に出るにはまだ早かったようだ。
次回は投資家の欲望と恐怖を映し出す鏡、「チャート分析」の基礎を学ぶ。
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